■第723段　退職金制度は税効果が高い
　（シリーズ　福利厚生費を学する）　令和５年７月３日

●楽しみながら働き続ける

　退職金制度も大事な福利厚生の一環だ。うちの事務所では中退共（中小企業退職金共済制度）に加入している。それなりの会社であれば最低でも退職時に２千万円を支給できる制度設計が望ましい。２０１９年に麻生太郎大臣（財務･金融担当）が「表現が不適切だった」と切り捨てた「老後２千万円問題」は正式にオーソライズされていないが、老後資金は実は２千万円でも足りない。

　働けるうちは働くのが基本だ。楽しみながら仕事をして年寄りになっても社会に貢献し、お金をもらって生きていくのが一番いい。人間は社会的な動物だから、ずっと遊んでは暮らせない。仕事が苦痛で労働が嫌だと考える感覚は間違っている。
　開業のための独立ならともかく、スキルもなく早期退職をして無職だと、人生１００年時代にビクビクしながら既存の資産を食い潰していくことになる。「ハッピーリタイア＝楽チン人生」ではない。お金が減っていくだけなので、早期リタイアしない方がいい。

●退職金８００万円の税金は０円

　世の中には退職金がゼロという会社もある。退職金も賞与も福利厚生もなく、全部給与に上乗せする年俸制を採用している。その方が月給が高くなり、人材採用で有利に働く。
　退職金を給与に上乗せしてしまうと人は生活費として使ってしまいがちなので、私は退職金の廃止には大反対だ。退職金なら社会保険料がかからず税金も安い。２０年勤めると退職金は８００万円で、税金は０円だ。２５年勤めて1千万円もらっても、税金はほぼゼロに等しい。それを給与で全部ならしたら、税効果が低く、パフォーマンスが落ちる。

　目先の給料を欲しがる人が多いので、退職金制度は縮小化していく。退職金は３年以上在職しないともらえないので、転職、退職しがちな若い人には魅力に乏しいのだろう。
　社員全員が３年で辞めていたら会社は成り立たない。１０人採用して３人ほどが残り、会社を支えていく。うちの事務所では、楽しむスキルを持つ資質の人が結果として残っている。残るのは自分に合う人だ。その３人を手厚くしていくのが企業経営だ。
　退職金制度をしっかり整えていくことが企業の社会的責任だと考えている。


　文責　山田　咲道　公認会計士・税理士
　中央区の税理士　エース会計事務所　会社設立できる公認会計士　東京都

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