■第618段　労働成果主義ではなく、労働時間主義
　（シリーズ　ブラック問題を考える）　平成３１年２月４日

●人間は楽して稼ぎたい動物

　成果報酬ではなく、時間に対して給料を払うというのが労働基準法の発想だ。労働成果ではなく労働時間が重視されると、だらだらと不効率に仕事をする誘因になり、残業代を稼ぐ人が出てくる。労働の質を問われることなく、ただ職場に残っているだけで、残業代という賃金が支払われるからだ。所定時間内に仕事が終わらずに、長時間残業をする能力の低い人ほど給料が高くなるという不思議な現象が生まれてしまう。挙げ句の果てには、ブラックな会社が悪いと文句をつけかねない。

　世の中には楽して稼ぎたい人が圧倒的に多い。残業して稼ぎたいと願う、ひどい考えの人が上司になると、部下や職場は残業漬けになる。たとえ上司が残業体質でも「帰ります」と残業をきっぱり断れればいいが、自分一人だけ帰りづらいという雰囲気の職場は多い。残業していないと仕事をしていないように扱われることもある。
　労働法制、従業員の意識ともに、大いに問題がある。会社経営上、本質的に避けられないこの二つの歪みをきちんと理解しないと、過重労働は避けられない。

●効率が高いと給与が少ない

　所定時間内にきっちり仕事を仕上げて帰る、できる社員は給与が少なくなってしまう。残業代もつかず、会社も儲かるはずなのに、要領が悪い方が賃金が高いという矛盾した労働法制なので、効率よく仕事したことへの報酬はない。有能な人はそのうち課長などの管理職に昇進し、手取り額がもっと減ってしまうこともある。

　昔は転職が厳しい時代だったが、いまは能力があれば、どんどん給料の高いところに転職できる時代である。辞めるという個人的な方法で解決できるため、能力のない人が稼いでいるブラックな職場から、有能な人はみんな逃げていく。いかに労働者から搾取して金を稼ぐかばかり考えるような職場に優秀な人はいつかないため、ますますブラックな労働環境になっていく。経営者として、しっかりと仕切っていくべきである。

　文責　山田　咲道　公認会計士・税理士
　中央区の税理士　エース会計事務所　会社設立できる公認会計士　東京都

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