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■第796段 値入れの原則を把握する
(テーマ 個人で起業する) 令和8年7月20日
●業種ごとの売上総利益(粗利)率の目安
個人で起業するなら、まず値入れの基本を理解する必要がある。どの業種にも売上総利益(粗利)率の目安が存在し、それを下回る価格設定では事業は成り立たない。
飲食業であれば、原材料費は売価の3割以下に抑える必要があり、売価は仕入の3.3倍が最低ラインだ。具体的な目安として、卸売業は粗利率20%以上(売値=仕入×1.3倍)、小売業は30%以上(仕入×1.5倍)、飲食業は70%以上(仕入×3.3倍)、製造業は50%以上(仕入×2倍)というラインになる。安く仕入れて高く売るのが基本だ。
この感覚が個人には難しい。知人に物を1.5倍の価格で売ることに気後れしてしまう。しかし、仕入れから逆算した価格設定をしなければ利益は出ず、継続は不可能である。
開業当初にありがちな失敗が「薄利多売」だ。利益率が低いと販売量を増やさざるを得なくなるが、人的・物的コストが膨れ上がる。個人開業ではリソースが限られているため、例えば寿司屋ならスシローのようなインフラが整ったチェーン店と同じ土俵で戦っては勝ち目がない。高付加価値で高単価を実現する「高級寿司」のようなビジネスモデルを目指すべきだ。
●相場観と原価意識を持たずに利益は出せない
値入れができない理由の一つに、業界の相場観を知らないことがある。私が30年前に在籍していた監査法人トーマツでは、パートナーのチャージレートは1時間2万円近く、新人でも1万円程度、1日稼働すれば7万円ほどと知っていたため、開業後も価格設定に迷わなかった。
値入れは利益の源であり、経営の根幹を成す。値入れのバランスは極めて重要で、その感覚がなければ、どれほど腕があっても適正価格を見いだせず、商売にはならない。
エース会計事務所では、届出書を提出するだけでも最低1.5万円の請求を行う。人件費、郵送費、チェックの時間を含めて3000円〜5000円の原価がかかる。1.5〜2倍の値入れをして1万円請求したとしても、利益としてはわずかであり、感覚的には妥当な水準だ。
社員は顧客との請求交渉を避け、無償で対応したがるが、それでは事務所が赤字に陥る。利益は自然に生まれるものではなく、意図的に生み出すものだ。値入れの感覚がない者は経営の視点を持たず、組織全体の損失に気づかない。利益を実現することはできない。
文責 山田 咲道 公認会計士・税理士
中央区の税理士 エース会計事務所 会社設立できる公認会計士 東京都
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